Oracle Database 10g R2 をOranaviを使わずにインストールする方法

[概  要]

本ドキュメントでは、Asianux Server 3Oracle Database 10g Release 2 (10.2)を、Oranaviを使わずにインストールする方法について説明します。

 

Asianux Server 3Oracle Database 10g Release 2 (10.2)をインストールする方法としては、以下のAB2つの方法があります。

 

A: Install Navigator for Oracleを使う方法

B: Install Navigator for Oracleを使わない方法

 

AInstall Navigator for Oracleとは、Oracle製品のインストールを支援するユーティリティです。大変簡単にOracleをインストールできるため、通常はこちらを推奨します。

 

本ドキュメントでは、Bの方法について説明します。

 

[対象となる製品のバージョン]

Asianux Server 3 for x86(32bit)
Asianux Server 3 for x86-64(64bit)

 

[対象となるパッケージ]

Oracle Database 10g Release 2 (10.2) for Linux x86

Oracle Database 10g Release 2 (10.2) for Linux x86-64

 

[注意事項]
本ドキュメントは、各ソフトウェア開発元の情報およびマニュアル等を元にした参考情報です。
本ドキュメントの内容は、予告なしに変更される場合があります。

 

本ドキュメントは、限られた評価環境における検証結果をもとに作成しており、全ての環境での動作を保証するものではありません。
本ドキュメントの内容に基づき、導入、設定、運用を行なったことにより損害が生じた場合でも、弊社はその損害についての責任を負いません。あくまでお客様のご判断にてご使用ください。

 

[インストールの流れ]

 

インストールは下記の流れで行います。この文書では、主にOSのインストールからOracle Universal Installerの起動までについて説明します。Oracle Universal Installer起動後の操作については、下記のOracle製品マニュアルをご覧ください。

 

Oracle Database インストレーション・ガイド 10g リリース210.2for Linux

Oracle Database クイック・インストレーション・ガイド 10g リリース210.2for Linux

インストール環境に応じて、x86またはx86-64の文書を参照してください。

 

1.OS のインストールとソフトウェア要件

2.ハードウェア要件の確認

3.カーネルパラメータの設定

4.固定IPアドレスとホスト名の設定

5.シェル制限の設定

6.インストールユーザーおよびグループの作成

7.インストール先ディレクトリの作成

8.環境変数の設定
9.oracleユーザでXウィンドウ起動
10.ターミナルの準備

11. CDのマウント

12. TEMPTMPDIRの設定

13. TNS_ADMINの確認

14. ORACLE_BASEORACLE_HOMEの確認

15. インストーラ(OUI)起動

16. インストール時の注意事項

17. インストール後の設定

 

[インストール手順]

ソフトウェア要件について

Oracle Database 10g Release 2 (10.2) for Linux x86を使用する場合には、Asianux Server 3 for x86(32bit)を、Oracle Database 10g Release 2 (10.2) for Linux x86-64を使用する場合には、Asianux Server 3 for x86-64(64bit) をインストールします。 Asianux Server 3 for x86-64(64bit) 上でOracle Database 10g Release 2 (10.2) for Linux x86を稼動させることはサポートされていませんので、ご注意ください。

 

1.OS のインストール

 

OSのインストレーションガイドに従ってインストールします。インストールの種類では「基本パッケージ:すべて」を選択してください。

ミドルウェアパッケージ、仮想化パッケージについては必須ではありません。

 

2.ハードウェア要件の確認

 

下記が必要なハードウェア要件です。

 


項目
内容
補足(確認方法など)
搭載メモリ
1024MB以上

・メモリ容量の確認
# grep MemTotal /proc/meminfo

空きディスク領域
ソフトウェア:1.5GB3.5GB
データベース:1.2GB
・ディスク領域の確認

# df インストールディレクトリ

スワップ領域

搭載メモリが1GB未満:メモリサイズの2
搭載メモリが1GB以上2GB未満:メモリサイズの1.5
搭載メモリが2GB以上8GB未満:メモリサイズと同じ値
搭載メモリが8GB以上:メモリサイズの0.75

・スワップ容量の確認
# grep SwapTotal /proc/meminfo
・スワップの追加
1) パーティションを作成し領域タイプをswapに設定
2) /etc/fstabswapパーティションの行を追加
3) # swapon -a

その他

/tmp400MB以上の空きディスク領域

/tmpの領域サイズの確認
# df /tmp

 

 

Oracle Database 10gをインストールするには、前述のハードウェア要件を満たす必要があります。それぞれについて確認します。

 

搭載メモリとスワップサイズは、次のコマンドで調べられます。MemTotalが搭載メモリで、SwapTotalがスワップです。

 

$ cat /proc/meminfo

total: used: free: shared: buffers: cached:

Mem: 1052545024 1036943360 15601664 179281920 191262720 573591552

Swap: 542826496 32862208 509964288

MemTotal: 1027876 kB

MemFree: 15236 kB

MemShared: 175080 kB

Buffers: 186780 kB

Cached: 543004 kB

SwapCached: 17144 kB

Active: 587336 kB

Inact_dirty: 326404 kB

Inact_clean: 8268 kB

Inact_target: 256936 kB

HighTotal: 131008 kB

HighFree: 11524 kB

LowTotal: 896868 kB

LowFree: 3712 kB

SwapTotal: 2030104 kB

SwapFree: 498012 kB

BigPagesFree: 0 kB

 

Oracleをインストールするパーティションにハードウェア要件を満たす空きがあることを確認します。

 

$ df -h

Filesystem Size Used Avail Use% Mounted on

/dev/sda5 26G 21G 3.7G 85% /

/dev/sda1 68M 11M 54M 16% /boot

 

同様に/tmpを含むパーティションに400MB以上の空きがあることを確認します。空きがないときには、TEMP環境変数を使って回避できます。

 

$ df -h /tmp

Filesystem Size Used Avail Use% Mounted on

/dev/sda5 26G 21G 3.7G 85% /

 

3.カーネルパラメータの設定

 

Asianux Server 3のカーネルパラメータはOracleに最適化されています。ただし、Oracle Database 10g Release 2では、第2版のマニュアルから以下のパラメータの推奨値が変更されましたので、これらのパラメータに関しては、ご使用のシステムの設定値を注意して確認してください。

 


推奨値が変更されたパラメータ
以前の値
新しい値
/proc/sys/net/core/rmem_default
262144
1048576
/proc/sys/net/core/rmem_max
262144
1048576

 

カーネルパラメータを確認するには/etc/sysctl.confファイルを参照して下さい。

 

# vi /etc/sysctl.conf

 

カーネルパラメータの変更は、/etc/sysctl.confファイルを修正し、以下のコマンドを実行することで、設定した値を動的に有効にすることができます。

 

# sysctl -p

 

4.固定IPアドレスとホスト名の設定

 

Oracleインストール時にDHCP割当てのIPアドレスを使用していると警告が表示されます。

そのため、インストール前に固定のIPアドレス設定を行うことを推奨します。

また、ホスト名が正しく設定されていないと netca(Oracle Net Configuration Assistant)の起動エラーとなる場合が有りますので、事前に確認しておくことを推奨します。

IPアドレス設定およびホスト名の設定はrootユーザにてsystem-config-network-guiを使用して行えます。

 

# system-config-network-gui

 

また、hostnameコマンドの結果に対してpingを行った場合、127.0.0.1と解決される場合でも、DHCPを使用していると警告が表示される場合があります。/etc/hostsに固定IPアドレスとホスト名を記載することを推奨します。

 

# hostname

example.example.com

# ping example.example.com

 

5.シェル制限の設定

 

シェル制限とは、ユーザーごとの最大プロセス数や最大オープンファイル数など、ユーザーごとに設定する制限値です。Asianux Server 3では、シェル制限はあらかじめ設定されています。/etc/security/limits.confに、次の内容が設定されていることを確認してください。rootユーザーが変更できる上限値のハードリミットと、一般ユーザーが変更できる上限値のソフトリミットがあります。

 

# vi /etc/security/limits.conf

 

* hard nproc 16384

* soft nofile 2048

* hard nofile 65536

 

 

 注意、ssh経由で接続したときのエラー

ssh経由で接続すると、次のエラーが発生することがあります。

 

bash: ulimit: cannot modify limit: Operation not permitted

 

この原因は、ssh接続時に、/etc/security/limits.confの設定は反映されないからです。sshではセキュリティ確保のため、ssh経由で接続したプロセスに対し、そのユーザーが本来持っている権限以上の変更はできません。

 

ssh経由でも/etc/security/limits.confの設定を有効にしたいときには、sshdの設定ファイルに次の1行を追加します。

 

# vi /etc/sshd/sshd_config

 

UsePrivilegeSeparation no

 

sshdデーモンを再起動します。

 

# service sshd restart

 

この設定はセキュリティホールにつながる可能性があります。外部からアクセスできるサーバーには絶対に設定しないでください。

 

 

6.インストールユーザーおよびグループの作成

 

このセクションではOracleオーナーとなるユーザーおよびグループを作成します。今回は次の条件でインストールします。

 


項目
Oracleオーナー
oracle
Oracleインストール用グループ
oinstall
Oracle管理者用グループ
dba
グローバルデータベース名
orcl
Oracleのインストール先
/opt/app/oracle
Oracleホーム
/opt/app/oracle/product/10.2.0/db_1
データベースの作成先
/opt/app/oracle/oradata

 

インストール用ユーザーグループ「oinstall」と管理者用グループ「dba」を作成します。

 

# groupadd oinstall

# groupadd dba

 

oracleユーザーを作成します。作成したらパスワードも設定します。

 

# useradd -g oinstall -G dba oracle

# passwd oracle

Changing password for user oracle

New password:<ここにパスワードを入力>

Retype new password:<同じパスワードを入力>

passwd: all authentication tokens updated successfully

 

7.インストール先ディレクトリの作成

 

Oracleのインストール先ディレクトリを作成します。今回はインストール先を/opt/app/oracleとしていますが、/u01/app/oracle/opt/oracleなどでも構いません。

 

# mkdir -p /opt/app/oracle

# chown oracle:oinstall /opt/app/oracle

# chmod 775 /opt/app/oracle

 

8.環境変数の設定

 

これまではrootユーザーで作業してきましたが、ここからはoracleユーザーで作業します。oracleユーザとrootユーザーの実行するコマンドについては、コマンドプロンプトを分けて表記していますので注意してください。rootユーザーは"#"で、一般ユーザーは"$"です。

 

Oracle Database 10g Release2のマニュアルには、Oracleに関連する環境変数をソフトウェアインストール時にoracleユーザーに設定する必要はない(シェル起動ファイルにOracleに関連する環境変数の定義があれば削除する)旨の記述があります。

しかし何も設定しない場合は、インストーラのデフォルトとして、以下の場所へインストールされます。

・インベントリ・ディレクトリ:$HOME/oraInventory

ORACLEホーム:$HOME/oracle/product/10.2.0/db_1

・データファイル格納ディレクトリ:$HOME/oracle/product/10.2.0/oradata

 

したがって、環境変数ORACLE_BASEORACLE_HOMEについては事前に設定しておくと、自分の指定した場所へインストールを行うことができます。ここでは以下のように値を設定します。

 

$ export ORACLE_BASE=/opt/app/oracle

$ export ORACLE_HOME=/opt/app/oracle/product/10.2.0/db_1

 

ただし以前から使用しているoracleユーザで新規にインストールを行う際は、既存のデータベースに影響を与えないように、環境変数の設定には注意してください。

 

9.oracleユーザでXウィンドウ起動

 

Oracle Database 10gのインストールを開始します。

Xが必要なので、oracleユーザーでログインしてXウィンドウを起動します。

 

10.ターミナルの準備

 

ターミナルを2つ起動します。インストール時には、rootユーザーも使用するので、1つをrootユーザーにします。

 

$ su -

Password:

 

11CDのマウント

 

Oracle Database10gCD-ROMをドライブにセットします。通常Xウィンドウシステムを起動している場合は、KDEが自動的にCD-ROMを検知し、操作を聞いてきます。

[開く]を選択すれば、自動的に/media以下にCD-ROMがマウントされます。

手動でマウントするときには、rootユーザで以下のコマンドを実行してください。

 

# mount -t iso9660 /dev/cdrom /media/

 

12TEMPTMPDIRの設定

 

ハードウェア要件の確認で、/tmpの空き容量が少ないときには、十分に空きのあるディレクトリを環境変数TEMP,TMPDIRに指定します。

 

$ mkdir /opt/app/oracle/tmp

$ export TEMP=/opt/app/oracle/tmp

$ export TMPDIR=/opt/app/oracle/tmp

 

13TNS_ADMINの確認

 

TNS_ADMINが設定されていないことを確認します。設定してあるときはunsetします。

 

$ echo $TNS_ADMIN

 

下記は設定してあるときのみ実行します。

 

$ unset TNS_ADMIN

 

14ORACLE_BASEORACLE_HOMEの確認

 

間違ったORACLE_BASEORACLE_HOMEが設定されていないことを再度確認してください。

 

$ env | grep ORACLE

ORACLE_BASE=/opt/app/oracle

ORACLE_HOME=/opt/app/oracle/product/10.2.0/db_1

 

15.インストーラ(OUI)起動

 

次にoracleユーザーでインストーラーを起動します。あとは画面の指示に従ってインストールします。詳細はOracleの製品マニュアルをご覧ください。

 

$ /media/cdrecorder/runInstaller -ignoresysprereqs

 

-ignoresysprereqsは前提条件のチェックを行わないオプションです。

Oracle10g R2Asianux Server 3より先に開発されているため、前提条件のチェックが行えませんが、この文書の前提条件に準拠した上でインストールするのであれば問題ありません。

 

また、インストール時の[製品固有の前提条件チェック] [オペレーティング・システムの要件] および[オペレーティング・システム・パッケージの要件][カーネルパラメータ] について警告や検証を確認されますが、同様にこの文書の前提条件に準拠した上でインストールするのであれば問題ありません。

 

16.インストール時の注意事項

 

16.1. Xウィンドウの表示エラー

 

rootユーザで起動したXウィンドウ環境で、oracleユーザーでインストーラーを起動する場合や、リモートシステム上のXウィンドウにインストーラを表示させる場合などは、以下のエラーメッセージがJavaのエラーメッセージと共に表示されることがあります。

この場合には、インストーラを表示させる環境でxhostを実行してインストーラの表示を許可するか、インストーラ実行環境で正しいDISPLAY環境変数を設定しなおしてください。

 

Xlib: connection to "xxxx:0.0" refused by server

Xlib: No protocol specified

 

oracleユーザでxclock等を実行して正常に表示されることを確認してください。

 

16.2. netca(Oracle Net Configuration Assistant)の起動エラー

 

ネットワーク設定をdhcpで行ったり、ホスト名が正しく設定されていない場合に、netcaの実行時に以下のようなエラーが出て起動できない場合があります。

 

An unexpected exception has been detected in native code outside the VM.

Unexpected Signal : 11 occurred at PC=0x31E603

Function=index+0x63

Library=/lib/tls/libc.so.6

 

Current Java thread:

at oracle.net.common.NetGetEnv.getDNSDomain(Native Method)

at oracle.net.ca.ConfigureProfile.setDefaultProfileParams(Unknown Source)

at oracle.net.ca.InitialSetup.setupConfigObjects(Unknown Source)

at oracle.net.ca.InitialSetup.(Unknown Source)

at oracle.net.ca.NetCA.main(Unknown Source)

 

この場合、ホスト名に指定された文字列からドメイン部分が取得できないことが問題です。

前述の[固定IPアドレスとホスト名の設定]を参照して対処を行ってください。

 

17.インストール後の設定

 

インストール終了後、画面の指示に従ってroot.shを実行します。その後、Oracle Universal Installerを終了します。ここではOracle Universal Installer終了後の作業について説明します。

 

関連する環境変数をOracleユーザのシェル起動ファイルに設定します。これらの設定はファイルの最後に追加してください。

 

$ cd

$ vi .bash_profile

 

export ORACLE_BASE=/opt/app/oracle

export ORACLE_HOME=$ORACLE_BASE/product/10.2.0/db_1

export ORACLE_SID=orcl

export NLS_LANG=Japanese_Japan.AL32UTF8

export PATH=$ORACLE_HOME/bin:$PATH

export LD_LIBRARY_PATH=$LD_LIBRARY_PATH:$ORACLE_HOME/lib

ulimit -n 65536 > /dev/null 2>&1

ulimit -u 16384 > /dev/null 2>&1

 

以下のコマンドを実行するか、再度Oracleユーザでログインすれば、設定した値が有効になりSQL*Plusを起動できます。

 

$ . .bash_profile

 

これでインストール作業は終了です。操作については、マニュアルなどをご参照ください。

 

[参考資料]
以下のインストレーションガイドはOTN Japan から提供されています。

"Installation Guides"をご参照ください。

 

・ Oracle Database インストレーション・ガイド 10g リリース210.2for Linux x86

・ Oracle Database クイック・インストレーション・ガイド 10g リリース210.2for Linux x86

・ Oracle Database インストレーション・ガイド 10g リリース210.2for Linux x86-64

・ Oracle Database クイック・インストレーション・ガイド 10g リリース210.2for Linux x86-64

 

[更新履歴]

2008年 4月 18日 新規作成